2016年11月01日

ハロウィン終了のお知らせ

久々に記事を書きます。
どうやら私は生活に余裕が出てくるとチェスに戻ってくるようです。
今回はニコ生はやりませんが、ハロウィーンギャンビットという定跡について書きます。
こういう夢をぶち壊す記事はあまり書きたくないんですが、この定跡に負けてしまうのは
なかなか悲惨なので、対策を押さえておいた方がいいかなということで。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6
WS000157.JPG
Four Knights Game。3.Bb5のRuy Lopezの陰に隠れがちですが、
決して白として悪い選択肢ではありません。
ここで白には4.Bb54.d4といった選択肢がありますが、そういった
まともな考え方をかなぐり捨てた手が・・・

4.Nxe5!?
WS000158.JPG
Halloween Gambit!
ナイトを捨ててセンターポーンを手にします。この後で白が思い描く理想の展開は・・・

4...Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5 Nb8? 7.e5 Ng8 8.d6
WS000159.JPG
こうなると白に代償のある局面になります。
黒もまだ戦えますが、Nb5など、嫌な手が見えますね。
d6にポーンが突き刺さると黒がかなり動きづらくなります。

また、6.d4に対してナイトがc6ではなくg6に引くのであれば、
6.d4 Ng6 7.e5 Ng8 8.Bc4 d5! 9.Bxd5 c6
WS000161.JPG
といった展開が考えられます。これは黒優勢ではありますが、
センターポーンが強く、白にもまだ攻めの可能性と楽しさが残る変化です。

しかしこれは理想。こんな暴力的なサクリファイスが成り立ってはいけないのです。
色々な対抗策がありますが、最も簡単で覚えることが少ないのは、
Scotchにトランスポーズしてしまう手順でしょう。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Nxc6 bxc6
WS000160.JPG
標準的なScotch Four Knightsの局面です。
実はHalloween Gambitからこの局面と全く同じ局面になる手順があります。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Nxe5 Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5 Bb4
この手がポイント。駒を返し、複雑な局面を避けます。

7.dxc6 bxc6
WS000160.JPG
こうなると白はdxc6とする他なく、Scotch Four Knightsと同じ局面にできます。
7...bxc6ではなく7...Nxe4も可能で、ほぼイコールの局面になります。

駒を返して互角、ないし黒が少し優勢の局面に持っていく方法は他にもあります。
例えば、
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Nxe5 Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5 Ne5 7.f4 Ng6 8.e5 Bb4
再び...Bb4で、今度はf6のナイトを返します。

9.exf6 Qxf6
WS000162.JPG
この手順もまた、黒としてはまったく問題のない局面に持っていけます。

では最後に、個人的に最も好きな、おすすめの変化を紹介しましょう。
駒を捨ててダイナミックな局面を生み出すことで代償を得ようとする
白の意図に見事にカウンターを食らわせることができる変化です。
この変化では、ナイトはc6に引きます。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Nxe5 Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5
6.e5なら6...Ng8 7.f4 d5!でOKです。

6...Ne5 7.d5 Ng8
先の変化では8...Bb4で駒を返しましたが、この変化ではナイトを引きます。

8.d6
WS000163.JPG
一貫性のある手はこれしかありません。
d6にポーンを刺すのがHalloween Gambitの至上目標です。
ここでd6に刺さないと黒から...d6とされてしまいます。

8...cxd6 9.exd6 Qf6 10.Nb5
WS000164.JPG
c7にナイトが入ってきて黒としては嫌な展開になりそうです。
実はここでの白の最善手は10.Qe2+だったりするのですが、この手10...Qe6でクイーン交換に
なります。白はダイナミックな攻めでもって代償を得ようとしているのに
その攻めで最も大きな役割を果たすクイーンを交換してしまうというのはどうも
変な話です。クイーン交換の後、黒は...b6-Bb7やg6のナイトを...Nh4-Nf5で使い直す手順を
使うことで簡単に優勢に持っていけます。

10...Nxf4!
WS000165.JPG
Exchange Sacrifice!
白のナイト捨てに対し、黒はルーク捨てで対抗します!
白はNxe5で駒を捨ててダイナミックな攻めの可能性に期待を
したわけですが、ここではむしろ黒が駒を捨てて
ダイナミックな攻めの代償を得る展開になっています。
この辺が個人的に最も気に入った変化である理由です。
粋な手ですよね。

11.Nc7+ Kd8 12.Nxa8 Qe5+!
WS000166.JPG
この手が必殺の一手で、どう転んでも黒優勢になります。
キングが逃げれば...Bxd6で黒に十分な代償がある展開になり、
13.Be2 Nxg2+も黒十分です。


ギャンビットは嫌いじゃないんですが、このハロウィーンギャンビットは
あまりにも暴力的すぎるというか、雑すぎるというか、それで成り立たないという感じですね。
Evans GambitとかScotch Gambitあたりは普通に指せる形になるので、多少ポーンを失っても
攻める形を取りたかったり、攻めの練習をしたかったりする場合は指してみると
いいと思います。










posted by ぽんと at 00:14| Comment(0) | チェス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月28日

棋譜解説:Boris Gelfand - Wang Yue 2010

先日ツイッターに上げた局面がこちら。

WS000140.JPG

白が優勢なのはわかるけど、どうやって突破しようかなという問題。
この局面に至るまでも含め、全編棋譜解説とします。図の局面まではざっくりとした解説で。

Boris Gelfand - Wang Yue
King's Tournament 2010

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 a6
a6スラブ。早めの...b5が狙いです。日本ではあまり見かけませんが、一定の人気を保っています。

5. Nf3 b5 6. c5 g6
6.b3で緊張を維持する指し方もあります。

7. Ne5 Bg7 8. f4 a5 9. Be2 Qc7 10. O-O O-O 11. a3 Be6 12. Bf3 Nbd7
13. Nd3 h6 14. g4 Nh7 15. h4 f5?

WS000141.JPG
戦略的ブランダーです。白がc5で局面を閉じたことでクイーンサイドでの戦いは一旦落ち着き
主戦場はセンターとキングサイドになるわけで、白はNe5-f4やg4、h4でセンターとキングサイドも
抑え黒から何もできない状態を作ろうとしていました。ここで黒が...f5としてしまうと
センターから手を作れなくなるためキングサイドで手を作るしかなくなりますが、
後の白のg5によりそれすらも不可能になってしまうため、いよいよ何もできなくなります。
15...Ndf6あたりで白の動向をうかがい、白のブレイクスルーに合わせて手を作っていく
指し方の方がよかったはずです。

16. g5 hxg5?
この手が黒から一切手を作れない状況を決定的にしました。hファイルが開くことで
恩恵を得るのはどう考えても白です。まだ16...h5としてキングサイドを閉じ、
Ne5の狙いとクイーンサイドからの狙いに対して守りを続ける方が望みがあったように思います。

17. hxg5 Kf7 18. Kg2 Rfb8 19. Bd2 Nhf8 20. Be2 Ke8 21. Ne1 Bg8
22. Nf3 Rb7 23. Bd3 Nb8 24. Ne2 Qd8 25. Ng3 e6 26. Rh1 Bh7 27. Qc2 Kf7


WS000140.JPG

そうしてこの局面になるわけです。
スペースアドバンテージから来る駒の移動のしやすさ、配置のつけやすさから白が
優勢なわけですが、どう突破すればいいのかと言われると即答できるほど単純な局面でも
ありません。ここからのGelfandの指し方は非常に参考になります。

28. Rh3 Kg8
黒はクイーンサイドでポーンをぶつけても戦力の移動がしやすい白の有利に働くだけなので、
何もできません。なので白はゆっくりと手を進めることができます。まず第一段階として、
hファイルにルークとクイーンを全て重ねます。

29. Rah1 Raa7 30. Kf1 Qe8 31. Be1 Bh8 32. Rh6 Bg7 33. R6h4 Bh8
34. R1h3 Re7 35. Qh2 Reb7

WS000142.JPG

hファイルにルークとクイーンが全て重なり非常に強力に見えますが、これだけでは突破には
不十分で、どこかでNh4-Nxg6やRxh7でh7のビショップを取り除いてからの突破といった
サクリファイスが必要不可欠になってきます。なので第二段階として、キングサイドからの
サクリファイスを最もいい状態で実行するためにはどうすればいいかを考えます。
ここからの指し方がグランドマスターだなあといった感じで、非常に洗練されています。

まず、ピースが全て最適な配置にあるかどうかを確認します。
ルークとクイーンは既に最適の配置についています。
f3のナイトもNh4-Nxg6の狙いのため、f3が最適な位置です。
e1のビショップもa5のポーンを睨みつつキングサイドが開いた時にBh4が指せる位置ということで
最適な位置にいます。d3のビショップはキングサイドが開いてからBh5と指せると
良さそうなのでe2が最適な位置になりそうです。g3のナイトの配置が悩みどころですが、
あえて挙げるならd3になるでしょう。f3のナイトと合わせてe5に入る狙いを作れる位置です。

次に、ポーンの配置を見ていきます。
ポーン形をいじれるのはクイーンサイドだけですが、このクイーンサイドのポーン形は
白にとって本当に最もいい形なのか?もっと白の好ましい形にすることはできないか?

1つだけ、今よりもっと良い状態に持っていけそうな指し方があります。
これを思いつくのが本当にすごいなと思うわけですが・・・
a5のポーンにマイナーピースで圧力をかけていけば黒は...a4と突かざるをえなくなり、
そうなれば白は新たにb4のマスが使えるようになります。
d3に置いたナイトがe5だけでなく
b4を使うこともできるようになるわけです。エンドゲームになってくればb3から黒の
ポーンを崩す選択肢も生まれます。

というわけで、ここからの白の指し方は、
@Be2と指す。
A黒のa5のポーンに圧力をかけ、...a4と指させる。
BNd3と指す。

このようになります。

36. Rh6 Re7 37. Ne2 Reb7 38. Nc1 Re7 39. Nb3 a4
WS000143.JPG
黒に...a4を指させることに成功しました。後はBe2とNd3です。

40. Nc1 Reb7 41. Be2! Re7 42. Nd3! Reb7
WS000144.JPG
ピース、ポーン、全てが最適な配置につきました。後は突破するだけです。

43. Nh4!
WS000145.JPG
狙いは44.Nxg6 Nxg6 45.Bh5 Rg7 46.Ne5で、
こうなるとRxh8の狙いのためにNxg6に...Bxg6と取り返すことができず、白が駒得して
勝勢になります。

43...Bg7
WS000146.JPG
上述の狙いを防ぐにはこの手しかありません。
もし時間があるなら、ここで10分ほど時間を取って次の白の手を考えてみると
いいトレーニングになると思います。上述の狙いは防がれましたが、他に白にできることはないか?
基本的に戦略的思考の出番はポーンやピースの配置を最善の位置につけるところまでで、
それ以降、本当に決定的な突破を実行する段階では戦術的思考、タクティクスの出番になってきます。



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44.Rxh7!
WS000147.JPG
白の戦略が実を結びました。ここからはタクティクスが局面を支配します。

44...Nxh7
44...Kxh7 45.Nxg6+ Kxg6 46.Bh5+は黒のクイーンが抜かれます。

45.Nxg6 Nd7
45...Qxg6 46.Bh5も黒クイーンが死にます。

46.Bh5 Qd8 47.Nb4 Rc7
WS000148.JPG
黒に...a4を突かせたのが生きてきます。黒ルークはc7から動けません。
さあ、再びTraining Positionです。時間が取れるなら10分ほど取って次の手を
考えてみてください。この手はなかなか難しいです。



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48.Nh8!!
WS000149.JPG

Empty Square Sacrificeと呼ばれる、何もないマスへ駒を捨てるサクリファイスは
他のサクリファイスに比べて非常に見えにくいです。

48...Ndf8
A)48...Bxh8 49.Bf7+ Kxf7 50.Rxh7 Bg7 51.g6+ 次にRxg7で白勝ち。
B)48...Kxh8 49.Bg6 Ndf8 50.Bxh7 Nxh7 51.Rxh7+ Kg8 52.Qh5に続けて
g6-Bh4-Bg5-Bh6でg7のビショップを取り除いて白勝ち。Rh8+が入れば黒陣は崩壊する。

49.Nf7 Rxf7
Nd6とされるよりかはマシかもしれません。6段目のナイトは非常に強力です。

50. Bxf7+ Rxf7 51. Rxh7 Qe8 52. Rh3 Ng6
WS000150.JPG
白が1ポーンアップになりました。加えてスペースもありピースの配置も整えやすいため、
時間こそかかれど白の勝利は揺るぎません。

53. Qe2 Rc7 54. Qh5 Kf7 55. Qh7 Qg8 56. Qxg8+ Kxg8 57. Nd3 Ra7 58. Ke2 Kf7
59. Nb4 Ne7 60. Kd1 Ra8 61. Kc2 Rg8 62. Nd3 Ra8 63. Rh7 Ng6 64. b3 Nf8

WS000151.JPG
Two Weaknessという原則があります。相手の弱点が1つならそこに戦力を集中させることで
守り切られてしまい突破に不十分でも、弱点が2つならカバーしきれずに突破が
可能になることが多い、というものです。ここでは白は既にキングサイドにg5のパスポーンという
強力な武器を持っているので、クイーンサイドから仕掛けて弱点を作り出すことで2つ目の争点を作り、
黒が守り切れなくなる展開を狙っています。

65. Rh2 axb3+ 66. Kxb3 Ke8 67. Ra2 Kd7 68. a4 bxa4+ 69. Rxa4 Rxa4
70. Kxa4 Kc871. Ba5 Ng6 72. Nb4 Kd7 73. Na6 Kc8 74. Bc7 Bf8 75. Ka5 Kb7
76. Bd6 Be7 77. Bxe7 Nxe7 78. Nb4 Ng8 79. Nd3 Ne7 80. Ne5 Ng8
81. g6 Nf6 82. g7 1-0

WS000152.JPG
プロモーションを止めつつc6のポーンを守ることはできません。



以上です。黒の反撃がない状況であれば白は何をやってもいいので、落ち着いて
最もいいポーン、ピースの配置を整えてから決定的な突破を仕掛ければよい、ということですね。
決定的な突破を仕掛けるまでは黒に...a4を突かせたりBe2とNd3を指したりといった戦略が、
突破を仕掛けてからはRxh7やNh8といった戦術が重要になってきます。戦略と戦術は
車の両輪のようなものであり、どちらも必要なものです。
なかなかこううまく試合を運べたりはしませんが、生涯に1局くらいはこういう
戦略と戦術が見事に調和され生かされた試合をしてみたいものですね。














posted by ぽんと at 22:21| Comment(0) | チェス:棋譜解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月05日

Can you calculate 23 ply?

先日ツイッターに上げた問題の解答です。
ツイッターに載せるにはちと濃すぎる問題でした。

問題の局面は以下の局面・・・とする前に、元ネタの棋譜をば。

V.Korchnoi-T.Petrosian
Odessa Candidates 1974


1. c4 Nf6 2. Nc3 e6 3. Nf3 b6 4. e4 Bb7 5. Qe2 c5 6. e5 Ng8
7. d4 Bxf3? 8. Qxf3 Nc6 9. d5 Nxe5 10. Qg3 d6 11. Bf4 Ng6
12. dxe6 fxe6 13. O-O-O Nxf4 14. Qxf4 g6 15. Qe4 Nf6 16. Qxe6+
Qe7 17. Rxd6 Qxe6 18. Rxe6+ Kf7 19. Rc6 Rc8 20. Rxc8 Bh6+
21. Kc2 Rxc8 22. Be2 Rd8 23. Kb3 Rd2? 24. Rd1 Ne8 25. Rxd2 Bxd2
26. Nb5 a6 27. Nc3 Bxc3 28. Kxc3 a5 29. Bd3 Nf6 30. f4 Nh5
31. g3 Nf6 32. Kd2 Ne8 33. g4 Nd6 34. Ke3 Ke6 35. h4 Kf7
36. b3 Kg7 37. g5 Kf7


WS000121.JPG
Training Position
White to move


トレーニングにも使える局面です。トレーニングに使うのであれば、
15分程時間を取り、白の継続手を考えてみてください。
時間を区切って考えるのが重要です。そうすることで最大の集中力を引き出せます。
恐らく白のコルチノイはこの時点で試合が終わる51手目まで
読み切っていたはずです。


***********************************************************************


では続けます。白はどのように手を進めていけばいいのか?
白は1ポーンアップですから、勝てるはずです。
しかし勝つためには、もう少しキングを前進させ、敵陣へ侵入する必要があります。
というわけで、ここで最もわかりやすい手は・・・

38.f5!
一時的にポーンを捨て、キングの侵入経路を作る好手です。

38...gxf5
38...Nxf5 39.Bxf5 gxf5 40.h5! Ke7 41.Kf4 Ke6 42.h6
ツークツワンクでf5のポーンが落ち、黒の負けです。

39.Kf4 Kg6

WS000120.JPG
White to move


これがツイッターに上げた局面です。
f5にポーンを突き捨てたことで白キングの侵入経路ができましたが、
この後どうやって勝つのか?
またまた15分取って考えトレーニングに使ってもいい局面です。

先ほども出てきた通り、こういった局面で良く出てくるテーマが
ツークツワンクです。黒はf5のポーンを取り返されてもそのまま負けるし、
白キングにクイーンサイドへ侵入されても負けてしまいます。
この2つの狙いに同時に対処しなければならないとなると、黒の手は
かなり制限されてきます。

ひとまず、強制手から読むのが原則ですから、まずは40.Bxf5+から検証してみましょう。

A)40.Bxf5+ Nxf5 41.h5+ Kxh5 42.Kxf5
WS000122.JPG
Black to move


白は勝てるでしょうか?

42...Kh4 43.g6
クイーンサイドに行く前にキングサイドのポーンを清算する必要があります。

43...hxg6 44.Kxg6 Kg4
WS000123.JPG
White to move


だいぶわかりやすい局面になりました。ここから両キングがクイーンサイドへ向かいます。
☆この局面を覚えておいてください!☆

45.Kf6 Kf4 46.Ke6 Ke4 47.Kd6 a4!
WS000124.JPG
White to move

そのままキングレースになるとb6が先に落ちる黒が負けるので、この一手です。

48.bxa4
48.Kc6 a3! 49.Kxb6 Kd4 50.Kb5 Kc3 51.Kxc4 Kb2 52.b4 Kxa2 53.b5 Kb2 54.b6 a2
55.b7 a1=Q 56.b8=Q+
も本譜と同じ白が1ポーンアップのクイーンエンドゲームになります。

48...Kd4 49.Kc6 Kxc4 50.Kxb6 Kd4!
WS000125.JPG
White to move

50.Kb4??はダメです。Qa5+からQc5+でc1でクイーン交換された後のa4ですぐに負けてしまいます。

51.a5 c4 52.a6 c3 53.a7 c2 54.a8=Q c1=Q
WS000126.JPG
White to move

クイーンエンドゲームになりました。正直に言います。クイーンエンドゲームの解説は
難しすぎるのでやってられません。要は48.Kc6だと白にcポーンが残ったクイーンエンドゲームに
なり、48.bxa4だと白にaポーンの残ったクイーンエンドゲームになります。そしてお察しの通り、
aポーンが残っているクイーンエンドゲームだとドローの可能性が上がり、cポーンが残っている
クイーンエンドゲームだとポーンアップ側が勝つ可能性が上がります。クイーンを交換して
aポーンのみが残ったポーンエンディングならドローにできる局面が多々ありますよね。
正直なところ勝てるかどうかわかりません。適当にコンピュータに指させてみたところ、
48.Kc648.bxa4もドローになりました。
人間の頭ではっきりわからない以上、これを正解とすることはできません。
ここで抑えておきたいのは、黒の...a4!が試合を救う一手になっていることです。

そこで、次はそのカウンターリソースを潰す40.a4を検証してみましょう。

B)40.a4
WS000127.JPG
Black to move

黒の手を考えてみると、なかなか難しいです。
というか、既にツークツワンクです。キングが動いてもナイトが動いてもポーンが落ちます。
40...h6 41.gxh6 Kxh6 42.Ke5 これはキングサイドにhポーンが残る上に白キングにクイーンサイドに
侵入されるのでダメです。この先を読む必要はありません。40...h5も同様にダメ。
40...Kf7 41.Bxf5 取り返してポーンエンディングにすれば負けるし、取り返さなくても白キングが
クイーンサイドに近いので明らかにダメです。
40...Kh5 41.Bxf5 Nxf5(41...Kxh4 42.Bxh7 白勝ち)42.Kxf5 Kxh4 43.g6 hxg6 44.Kxg6 Kg4
WS000128.JPG
White to move

これだと黒はなんとかマテリアルをイコールに保つことができます。
変化A)に☆この局面を覚えておいてください!☆
と書いた局面がありましたね。この局面は同じ手番ですが、白が既にa4を突けており、
黒からの...a4がないという違いがあります。
続けるとどうなるか。
45.Kf6 Kf4 46.Ke6 Ke4 47.Kd6 Kd4 48.Kc6 Kc3 49.Kxb6 Kxb3
WS000129.JPG
White to move

aポーンとcポーンのどちらを取ろうか・・・白の最善がわからないのであれば、
わかるまで考えましょう。これくらいは閃かなければ!


***********************************************************************


とどめの一手は、
50.Kb5!
WS000130.JPG

これで白勝ちです。もはや説明する必要はありませんね。


もう言ってしまいますが、正解は40.a4!です。
この手で黒がツークツワンク、ただそれだけです。
WS000127.JPG
Black to move

ここでペトロシアンが選んだ手は、40...Ne4でした。
WS000131.JPG
White to move


ここまで読んできたならもう白の勝ち方がわかるはずです。
必要なアイデアは全て示しました。後はただ読むだけ。
さあ、とどめの一手まで、読み切ってみましょう!


***********************************************************************


では、本譜の手順を示します。
41.Bxe4 fxe4 42. Kxe4 Kh5 43. Kf5 Kxh4 44. g6 hxg6+ 45. Kxg6 Kg4
46. Kf6 Kf4 47. Ke6 Ke4 48. Kd6 Kd4 49. Kc6 Kc3 50. Kxb6 Kxb3 51. Kb5 1-0

WS000130.JPG

以上で解説を終わります。
黒の...a4があるかないかで全く違ってくるんですね。
改めてエンドゲームの面白さを感じた局面でした。
あなたはコルチノイと同じく読み切ることができましたか?
ちなみに私はKb5!が見えませんでした。なかなか難しいものです・・・




posted by ぽんと at 13:08| Comment(1) | チェス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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