2018年01月04日

筋トレに学ぶ、チェスのトレーニングの方法論 Vol.1

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

ツイッターの流れを見て、ブログを更新せよとの神の啓示を受けたので、
とても久しぶりに記事を書いてみようと思います。

数か月前から筋トレをやっているのですが、筋トレの方法論に
チェスのトレーニングに活かせる部分がとても多く有用に感じたので、
今回はその部分について書いていきたいと思います。
最初に筋トレの方法論を紹介し、その後でそれをチェスに応用していきます。

では最初に、一番大事なことを。

●自分のレベルに合ったトレーニングをする

まず筋トレの話から。
筋トレで大事なことに、筋肉に「適切な」負荷をかける、というものがあります。
この負荷は軽すぎても重すぎてもいけません。
例えば、筋トレでプッシュアップ(腕立て伏せ)を例に取るならば、
最も負荷の軽いプッシュアップは壁に両手をついて腕立て伏せをする
ウォール・プッシュアップになるわけですが、このプッシュアップは
健常者であれば誰でも問題なくできるプッシュアップであり、
筋力アップにはつながりません。

(筋力アップにはつながりませんが、肩や腕の関節を徐々にプッシュアップに慣らす
ことができるため、プッシュアップをするならばまずウォール・プッシュアップから始めて、
10回×1セット→25回×2セット→50回×3セットが問題なくできるようであれば、
1ステップ上の、腰より少し高めの台に手をついて腕立て伏せをする
インクライン・プッシュアップに移る、というのがプッシュアップの
王道トレーニング法です)

また、最も負荷の重いプッシュアップはワンアーム・プッシュアップ(片手腕立て伏せ)に
なりますが、いきなりこんなトレーニングをやろうとしても片手で体を支え、床まで
沈み込ませる段階で倒れてしまうのがオチです。
ちなみに、プッシュアップを簡単な順に並べると、

ウォール・プッシュアップ(壁に手を突いて腕立て伏せ)
インクライン・プッシュアップ(腰より少し高いくらいの台に手をついて腕立て伏せ)
ニーリング・プッシュアップ(膝を床について腕立て伏せ)
ハーフ・プッシュアップ(バスケットボールを胸の下に置いて、胸がボールに触れたら体を上げる)
フル・プッシュアップ(テニスボールを胸の下に置いて、胸がボールに触れたら体を上げる)
クローズ・プッシュアップ(両手の人差し指を触れ合わせて腕立て伏せ)
アンイーブン・プッシュアップ(片手を床、もう片手をバスケットボールの上に乗せて腕立て伏せ)
ハーフ・ワンアーム・プッシュアップ(片手を床につき、もう片手を背中に回し、股関節の下にバスケットボールを置いて、股関節がバスケットボールに触れたら体を上げる)
レバー・プッシュアップ(アンイーブン・プッシュアップで、片腕の支えで体を沈み込ませる時にもう片腕でバスケットボールを少しずつ真横に転がし、最低まで沈み込ませたときにバスケットボールに触れている手が水平で伸びた状態にする)
ワンアーム・プッシュアップ(片手腕立て伏せ)

最初はウォール・プッシュアップから始め、50回×3セットが
できるようならステップを1つ上げます。詰まったら1つ前のステップの
トレーニングが楽にできるようになるまでトレーニングし、再度トライします。
こうすることで、プッシュアップに必要な関節の力、筋肉の力を
徐々に鍛えながら、常に自分にとって最適な負荷のトレーニングを見つけ、
筋肉を鍛え続けることができます。

では、この話をチェスに応用しましょう。
チェスにおける筋肉とは何か?関節とは何か?
チェスは全て脳で考えてプレーするものなので、チェスにおける筋肉は、
チェス的な思考回路になるかと思います。関節は神経細胞同士のつながる力、
になるでしょうか。つまり、チェスのトレーニングをするということは、
脳内のチェス的な思考回路の拡張と強化をする、と言い換えることができます。

エンドゲームを例に取りましょう。
筋トレの方法論を応用するなら、すぐに筋力アップにはつながらなくても、
まず一番簡単なものから始めて関節を徐々に慣れさせていこう、
ということになります。エンドゲームの勉強で一番簡単なものといったら、
個人的な見解ですが、
和書であれば『終盤の基礎知識』、
洋書であれば『Pandolfini's Endgame Course』を盤駒を使って
しっかり読むことになるかと思います。
まずはこれらの本を読み込み、内容を理解しましょう。
筋トレ同様、反復、繰り返しが重要になってきます。
ここで関節を慣れさせておくことで、後のステップアップがスムーズになります。

あとはここから1冊1冊、本のレベルを上げていくことになるのかなと思います。
本のレベルを正確に判定するのが難しいという問題がありますが、
例えば『Silman's Complete Endgame Course』は本の構成そのものが
簡単なものから難しいものにステップアップしていけるようになっているため、
最初から読み始め、章の内容を繰り返し読み込み、自分の中に落とし込めたら
次の章に進むことで筋トレ的なトレーニング、上達が見込めるように思えます。

参考までに、完全なる主観でエンドゲームの本のレベル分けをしておきます。

・ステップ1
『Pandolfini's Endgame Course』

・ステップ2
『終盤の基礎知識』
チェスの玉手箱の『実戦に役立つエンディング』
『Silman's Complete Endgame Course』
『Winning Chess Endings』

・ステップ3
『Secrets of Grandmaster Endings』
『100 Endgames You Must Know』
『101 Chess Endgame Tips』
『Capablanca's Best Chess Endings』

・ステップ4
『Understanding Chess Endgames』
『Endgame Strategy』
『Chess Endgame Training』
『Endgame Virtuoso Anatoly Karpov』
『Endgame Challenge』(著者がJohn Hallの方)

・ステップ5
『Fundamental Chess Endings』
『How to Play Chess Endgames』

・ステップ6
『Dvoretsky's Endgame Manual』

独断と偏見ですが、何かのお役に立てば幸いです。


以上、筋トレとチェスになんとかつながりを持たせられないかということで
記事を書いてみました。個人的な見解ですが、チェスも筋トレと同様、
最も軽いものから始めて関節を慣らし、徐々に負荷を増やしていくことで
常に自分にとって最適な負荷がかかるトレーニングができる環境を作ることが
重要ではないかと考えています。

次に書く機会があれば、今度は筋トレの別の側面をチェスに応用してみようと思います。
長い記事を読んでいただきまして、ありがとうございました。




posted by ぽんと at 02:00| Comment(0) | お役立ち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月01日

ハロウィン終了のお知らせ

久々に記事を書きます。
どうやら私は生活に余裕が出てくるとチェスに戻ってくるようです。
今回はニコ生はやりませんが、ハロウィーンギャンビットという定跡について書きます。
こういう夢をぶち壊す記事はあまり書きたくないんですが、この定跡に負けてしまうのは
なかなか悲惨なので、対策を押さえておいた方がいいかなということで。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6
WS000157.JPG
Four Knights Game。3.Bb5のRuy Lopezの陰に隠れがちですが、
決して白として悪い選択肢ではありません。
ここで白には4.Bb54.d4といった選択肢がありますが、そういった
まともな考え方をかなぐり捨てた手が・・・

4.Nxe5!?
WS000158.JPG
Halloween Gambit!
ナイトを捨ててセンターポーンを手にします。この後で白が思い描く理想の展開は・・・

4...Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5 Nb8? 7.e5 Ng8 8.d6
WS000159.JPG
こうなると白に代償のある局面になります。
黒もまだ戦えますが、Nb5など、嫌な手が見えますね。
d6にポーンが突き刺さると黒がかなり動きづらくなります。

また、6.d4に対してナイトがc6ではなくg6に引くのであれば、
6.d4 Ng6 7.e5 Ng8 8.Bc4 d5! 9.Bxd5 c6
WS000161.JPG
といった展開が考えられます。これは黒優勢ではありますが、
センターポーンが強く、白にもまだ攻めの可能性と楽しさが残る変化です。

しかしこれは理想。こんな暴力的なサクリファイスが成り立ってはいけないのです。
色々な対抗策がありますが、最も簡単で覚えることが少ないのは、
Scotchにトランスポーズしてしまう手順でしょう。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Nxc6 bxc6
WS000160.JPG
標準的なScotch Four Knightsの局面です。
実はHalloween Gambitからこの局面と全く同じ局面になる手順があります。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Nxe5 Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5 Bb4
この手がポイント。駒を返し、複雑な局面を避けます。

7.dxc6 bxc6
WS000160.JPG
こうなると白はdxc6とする他なく、Scotch Four Knightsと同じ局面にできます。
7...bxc6ではなく7...Nxe4も可能で、ほぼイコールの局面になります。

駒を返して互角、ないし黒が少し優勢の局面に持っていく方法は他にもあります。
例えば、
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Nxe5 Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5 Ne5 7.f4 Ng6 8.e5 Bb4
再び...Bb4で、今度はf6のナイトを返します。

9.exf6 Qxf6
WS000162.JPG
この手順もまた、黒としてはまったく問題のない局面に持っていけます。

では最後に、個人的に最も好きな、おすすめの変化を紹介しましょう。
駒を捨ててダイナミックな局面を生み出すことで代償を得ようとする
白の意図に見事にカウンターを食らわせることができる変化です。
この変化では、ナイトはc6に引きます。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Nxe5 Nxe5 5.d4 Nc6 6.d5
6.e5なら6...Ng8 7.f4 d5!でOKです。

6...Ne5 7.d5 Ng8
先の変化では8...Bb4で駒を返しましたが、この変化ではナイトを引きます。

8.d6
WS000163.JPG
一貫性のある手はこれしかありません。
d6にポーンを刺すのがHalloween Gambitの至上目標です。
ここでd6に刺さないと黒から...d6とされてしまいます。

8...cxd6 9.exd6 Qf6 10.Nb5
WS000164.JPG
c7にナイトが入ってきて黒としては嫌な展開になりそうです。
実はここでの白の最善手は10.Qe2+だったりするのですが、この手10...Qe6でクイーン交換に
なります。白はダイナミックな攻めでもって代償を得ようとしているのに
その攻めで最も大きな役割を果たすクイーンを交換してしまうというのはどうも
変な話です。クイーン交換の後、黒は...b6-Bb7やg6のナイトを...Nh4-Nf5で使い直す手順を
使うことで簡単に優勢に持っていけます。

10...Nxf4!
WS000165.JPG
Exchange Sacrifice!
白のナイト捨てに対し、黒はルーク捨てで対抗します!
白はNxe5で駒を捨ててダイナミックな攻めの可能性に期待を
したわけですが、ここではむしろ黒が駒を捨てて
ダイナミックな攻めの代償を得る展開になっています。
この辺が個人的に最も気に入った変化である理由です。
粋な手ですよね。

11.Nc7+ Kd8 12.Nxa8 Qe5+!
WS000166.JPG
この手が必殺の一手で、どう転んでも黒優勢になります。
キングが逃げれば...Bxd6で黒に十分な代償がある展開になり、
13.Be2 Nxg2+も黒十分です。


ギャンビットは嫌いじゃないんですが、このハロウィーンギャンビットは
あまりにも暴力的すぎるというか、雑すぎるというか、それで成り立たないという感じですね。
Evans GambitとかScotch Gambitあたりは普通に指せる形になるので、多少ポーンを失っても
攻める形を取りたかったり、攻めの練習をしたかったりする場合は指してみると
いいと思います。










posted by ぽんと at 00:14| Comment(0) | チェス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月28日

棋譜解説:Boris Gelfand - Wang Yue 2010

先日ツイッターに上げた局面がこちら。

WS000140.JPG

白が優勢なのはわかるけど、どうやって突破しようかなという問題。
この局面に至るまでも含め、全編棋譜解説とします。図の局面まではざっくりとした解説で。

Boris Gelfand - Wang Yue
King's Tournament 2010

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 a6
a6スラブ。早めの...b5が狙いです。日本ではあまり見かけませんが、一定の人気を保っています。

5. Nf3 b5 6. c5 g6
6.b3で緊張を維持する指し方もあります。

7. Ne5 Bg7 8. f4 a5 9. Be2 Qc7 10. O-O O-O 11. a3 Be6 12. Bf3 Nbd7
13. Nd3 h6 14. g4 Nh7 15. h4 f5?

WS000141.JPG
戦略的ブランダーです。白がc5で局面を閉じたことでクイーンサイドでの戦いは一旦落ち着き
主戦場はセンターとキングサイドになるわけで、白はNe5-f4やg4、h4でセンターとキングサイドも
抑え黒から何もできない状態を作ろうとしていました。ここで黒が...f5としてしまうと
センターから手を作れなくなるためキングサイドで手を作るしかなくなりますが、
後の白のg5によりそれすらも不可能になってしまうため、いよいよ何もできなくなります。
15...Ndf6あたりで白の動向をうかがい、白のブレイクスルーに合わせて手を作っていく
指し方の方がよかったはずです。

16. g5 hxg5?
この手が黒から一切手を作れない状況を決定的にしました。hファイルが開くことで
恩恵を得るのはどう考えても白です。まだ16...h5としてキングサイドを閉じ、
Ne5の狙いとクイーンサイドからの狙いに対して守りを続ける方が望みがあったように思います。

17. hxg5 Kf7 18. Kg2 Rfb8 19. Bd2 Nhf8 20. Be2 Ke8 21. Ne1 Bg8
22. Nf3 Rb7 23. Bd3 Nb8 24. Ne2 Qd8 25. Ng3 e6 26. Rh1 Bh7 27. Qc2 Kf7


WS000140.JPG

そうしてこの局面になるわけです。
スペースアドバンテージから来る駒の移動のしやすさ、配置のつけやすさから白が
優勢なわけですが、どう突破すればいいのかと言われると即答できるほど単純な局面でも
ありません。ここからのGelfandの指し方は非常に参考になります。

28. Rh3 Kg8
黒はクイーンサイドでポーンをぶつけても戦力の移動がしやすい白の有利に働くだけなので、
何もできません。なので白はゆっくりと手を進めることができます。まず第一段階として、
hファイルにルークとクイーンを全て重ねます。

29. Rah1 Raa7 30. Kf1 Qe8 31. Be1 Bh8 32. Rh6 Bg7 33. R6h4 Bh8
34. R1h3 Re7 35. Qh2 Reb7

WS000142.JPG

hファイルにルークとクイーンが全て重なり非常に強力に見えますが、これだけでは突破には
不十分で、どこかでNh4-Nxg6やRxh7でh7のビショップを取り除いてからの突破といった
サクリファイスが必要不可欠になってきます。なので第二段階として、キングサイドからの
サクリファイスを最もいい状態で実行するためにはどうすればいいかを考えます。
ここからの指し方がグランドマスターだなあといった感じで、非常に洗練されています。

まず、ピースが全て最適な配置にあるかどうかを確認します。
ルークとクイーンは既に最適の配置についています。
f3のナイトもNh4-Nxg6の狙いのため、f3が最適な位置です。
e1のビショップもa5のポーンを睨みつつキングサイドが開いた時にBh4が指せる位置ということで
最適な位置にいます。d3のビショップはキングサイドが開いてからBh5と指せると
良さそうなのでe2が最適な位置になりそうです。g3のナイトの配置が悩みどころですが、
あえて挙げるならd3になるでしょう。f3のナイトと合わせてe5に入る狙いを作れる位置です。

次に、ポーンの配置を見ていきます。
ポーン形をいじれるのはクイーンサイドだけですが、このクイーンサイドのポーン形は
白にとって本当に最もいい形なのか?もっと白の好ましい形にすることはできないか?

1つだけ、今よりもっと良い状態に持っていけそうな指し方があります。
これを思いつくのが本当にすごいなと思うわけですが・・・
a5のポーンにマイナーピースで圧力をかけていけば黒は...a4と突かざるをえなくなり、
そうなれば白は新たにb4のマスが使えるようになります。
d3に置いたナイトがe5だけでなく
b4を使うこともできるようになるわけです。エンドゲームになってくればb3から黒の
ポーンを崩す選択肢も生まれます。

というわけで、ここからの白の指し方は、
@Be2と指す。
A黒のa5のポーンに圧力をかけ、...a4と指させる。
BNd3と指す。

このようになります。

36. Rh6 Re7 37. Ne2 Reb7 38. Nc1 Re7 39. Nb3 a4
WS000143.JPG
黒に...a4を指させることに成功しました。後はBe2とNd3です。

40. Nc1 Reb7 41. Be2! Re7 42. Nd3! Reb7
WS000144.JPG
ピース、ポーン、全てが最適な配置につきました。後は突破するだけです。

43. Nh4!
WS000145.JPG
狙いは44.Nxg6 Nxg6 45.Bh5 Rg7 46.Ne5で、
こうなるとRxh8の狙いのためにNxg6に...Bxg6と取り返すことができず、白が駒得して
勝勢になります。

43...Bg7
WS000146.JPG
上述の狙いを防ぐにはこの手しかありません。
もし時間があるなら、ここで10分ほど時間を取って次の白の手を考えてみると
いいトレーニングになると思います。上述の狙いは防がれましたが、他に白にできることはないか?
基本的に戦略的思考の出番はポーンやピースの配置を最善の位置につけるところまでで、
それ以降、本当に決定的な突破を実行する段階では戦術的思考、タクティクスの出番になってきます。



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44.Rxh7!
WS000147.JPG
白の戦略が実を結びました。ここからはタクティクスが局面を支配します。

44...Nxh7
44...Kxh7 45.Nxg6+ Kxg6 46.Bh5+は黒のクイーンが抜かれます。

45.Nxg6 Nd7
45...Qxg6 46.Bh5も黒クイーンが死にます。

46.Bh5 Qd8 47.Nb4 Rc7
WS000148.JPG
黒に...a4を突かせたのが生きてきます。黒ルークはc7から動けません。
さあ、再びTraining Positionです。時間が取れるなら10分ほど取って次の手を
考えてみてください。この手はなかなか難しいです。



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48.Nh8!!
WS000149.JPG

Empty Square Sacrificeと呼ばれる、何もないマスへ駒を捨てるサクリファイスは
他のサクリファイスに比べて非常に見えにくいです。

48...Ndf8
A)48...Bxh8 49.Bf7+ Kxf7 50.Rxh7 Bg7 51.g6+ 次にRxg7で白勝ち。
B)48...Kxh8 49.Bg6 Ndf8 50.Bxh7 Nxh7 51.Rxh7+ Kg8 52.Qh5に続けて
g6-Bh4-Bg5-Bh6でg7のビショップを取り除いて白勝ち。Rh8+が入れば黒陣は崩壊する。

49.Nf7 Rxf7
Nd6とされるよりかはマシかもしれません。6段目のナイトは非常に強力です。

50. Bxf7+ Rxf7 51. Rxh7 Qe8 52. Rh3 Ng6
WS000150.JPG
白が1ポーンアップになりました。加えてスペースもありピースの配置も整えやすいため、
時間こそかかれど白の勝利は揺るぎません。

53. Qe2 Rc7 54. Qh5 Kf7 55. Qh7 Qg8 56. Qxg8+ Kxg8 57. Nd3 Ra7 58. Ke2 Kf7
59. Nb4 Ne7 60. Kd1 Ra8 61. Kc2 Rg8 62. Nd3 Ra8 63. Rh7 Ng6 64. b3 Nf8

WS000151.JPG
Two Weaknessという原則があります。相手の弱点が1つならそこに戦力を集中させることで
守り切られてしまい突破に不十分でも、弱点が2つならカバーしきれずに突破が
可能になることが多い、というものです。ここでは白は既にキングサイドにg5のパスポーンという
強力な武器を持っているので、クイーンサイドから仕掛けて弱点を作り出すことで2つ目の争点を作り、
黒が守り切れなくなる展開を狙っています。

65. Rh2 axb3+ 66. Kxb3 Ke8 67. Ra2 Kd7 68. a4 bxa4+ 69. Rxa4 Rxa4
70. Kxa4 Kc871. Ba5 Ng6 72. Nb4 Kd7 73. Na6 Kc8 74. Bc7 Bf8 75. Ka5 Kb7
76. Bd6 Be7 77. Bxe7 Nxe7 78. Nb4 Ng8 79. Nd3 Ne7 80. Ne5 Ng8
81. g6 Nf6 82. g7 1-0

WS000152.JPG
プロモーションを止めつつc6のポーンを守ることはできません。



以上です。黒の反撃がない状況であれば白は何をやってもいいので、落ち着いて
最もいいポーン、ピースの配置を整えてから決定的な突破を仕掛ければよい、ということですね。
決定的な突破を仕掛けるまでは黒に...a4を突かせたりBe2とNd3を指したりといった戦略が、
突破を仕掛けてからはRxh7やNh8といった戦術が重要になってきます。戦略と戦術は
車の両輪のようなものであり、どちらも必要なものです。
なかなかこううまく試合を運べたりはしませんが、生涯に1局くらいはこういう
戦略と戦術が見事に調和され生かされた試合をしてみたいものですね。














posted by ぽんと at 22:21| Comment(0) | チェス:棋譜解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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